もうひとつ、「富士フイルム名古屋ビル再開発計画」というワードが一人歩きした背景には、栄エリア再開発最新情報が日常的にメディアを賑わせている環境があります。
中日ビルの建て替え完了や、栄広場(錦三丁目25番街区)における超高層複合ビルの建設など、名古屋の中心街はいま歴史的な再編期を迎えています。長年「名駅一極集中」と叫ばれてきた愛知県のオフィス市場ですが、高級ホテルや商業施設の進出を機に、栄・伏見エリアへの回帰現象が顕著になっています。
こうした大規模再開発のニュースが連日のように報じられる中で、「栄の有名企業ビルも解体されて再開発されるのではないか」という連想が働き、富士フイルムの拠点再編と混ざり合って誤認されたというのが実態です。築50年を超える老朽化ビルが次々と解体される中、2013年築の当ビルは耐震性・環境性能ともに最新基準を満たしており、現時点で解体再開発を行う経済的合理性は全くありません。
【プロの結論】CRE戦略の視点から見るオフィスの役割変化
企業のCRE(企業不動産)戦略の観点から見れば、自社ビル内に大規模な一般窓口を抱え続けることは、不動産効率の面で大きなコストを伴います。製品の小型化・モジュール化や配送インフラの進化により、メンテナンス拠点を都心の一等地に構える必然性は薄れました。
富士フイルムは、診断用医療機器や半導体材料、バイオCDMOといったBtoB領域への大転換を成功させたグローバル企業です。伏見のビルにおいても、グループの法人ソリューション営業やIT支援のヘッドクオーターとしての機能を重視するのは経営判断として極めて合理的といえます。
【当ビルのようなハイグレード物件の利用が向いている企業・慎重になるべき企業】
- 向いている企業:中部圏全域を統括する支社機能、優秀な人材獲得のために駅近と環境性能(ESG)を重視するIT・コンサルティング・医療関連企業。
- 慎重になるべき企業:不特定多数の一般消費者を日常的に呼び込む店舗型ビジネスや、坪単価コストを極限まで抑えたいスタートアップ初期段階の事業者。