不妊治療の末に40代で待望の第一子を授かったカップルを取材すると、妊娠判明の歓喜とほぼ同時に、押し寄せる不安に苛まれるケースが非常に目立ちます。SNSや妊娠コミュニティ、知恵袋などの投稿を分析しても、「40代初産でダウン症の確率を調べては毎晩涙が止まらない」「もし障がいがあったら、自分たちが先に逝ったあとの我が子の人生はどうなるのか」という切実な告白が溢れています。
都内の周産期母子医療センターで長年遺伝カウンセリングを担当する産婦人科医は、現場の空気を次のように証言します。
「40代で初産を迎える患者さんの多くは、キャリアを築き、高度生殖医療などの険しい道のりを経て妊娠に至っています。それだけに、『せっかく授かった命を失いたくない』という強い母性と、『育てる体力や経済的支援、将来の介護負担』という現実的な生活設計の間で激しく引き裂かれます。検査を受けるか否か、陽性だった場合に妊娠を継続するかどうかという重圧に耐えかね、夫婦関係に亀裂が入る場面も数多く見てきました」
実際に、NIPTを受検した夫婦のリアルな手記からは、二極化した心境が浮き彫りになります。
「受検して陰性という結果を得られたことで、ようやく胎児ネームを呼び、前向きにお腹の赤ちゃんと向き合えるようになった」(41歳・初産)
「陰性結果で一時的に安堵したものの、検査対象以外の疾患や発達特性のリスクは依然として残る。完全な安心を買うことはできないのだと痛感した」(39歳・初産)
40代初産においてダウン症の発症頻度が約100人に1人という現実は重たいものですが、現場の当事者たちが直面しているのは数値そのもの以上に、「親として背負う覚悟と倫理観の葛藤」であると言えます。