オスの成虫を見分ける際、最も確実かつ誰もが瞬時に判断できる基準が大顎の内歯(ないし:内側に突き出た突起)の位置と形状です。昆虫形態学の観点からも、この大顎の構造は獲物を挟む・挟み切るという用途の違いを色濃く反映しています。
大型個体における大顎の内歯の位置を比較すると、その差は歴然です。オオクワガタの大顎は緩やかな円弧を描いて湾曲し、中央からやや先端寄りに前方へ向かって鋭く突き出た大きな内歯が1本配置されます。これに対し、ヒラタクワガタの大顎は直線的で前方に長く伸び、大顎の根元(基部)付近から中央にかけて大型の内歯が位置し、その先にはノコギリのような細かい小歯が連続して並ぶという際立った特徴を持ちます。
「中型から小型の個体(40〜50mm台)になると顎が短くなり見分けにくい」という声も聞かれますが、小型になってもヒラタクワガタは内歯が常に根元寄りに位置するため、根本の突起を確認すれば判別を誤ることはありません。
もうひとつの重要な視覚的ファクターが体型の厚みと光沢の有無です。横から成虫を観察したとき、オオクワガタの体は前胸から上翅にかけてしっかりとした厚みがあり、重量感のあるドッシリとしたシルエットを誇ります。背中のツヤは過度な主張がなく、重厚なマットブラックに近い落ち着いた質感を漂わせます。一方のヒラタクワガタは、その名の通り「平べったい」扁平な体つきをしており、木の皮の極めて狭い隙間に滑り込むための進化を遂げています。表面にはやや鈍い艶があり、オオクワガタに比べると平滑で引き締まった印象を与えます。