ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「昔修理したコードのテープを剥がそうとしたら、黒いネバネバが付着して手が汚れた」「テープがずれて芯線がむき出しになっていた」という体験談が後を絶ちません。この不快な現象は、単なる接着剤の劣化ではなく、塩化ビニル特有の化学現象に起因しています。
ポリ塩化ビニル(PVC)は本来硬質なプラスチックであり、柔軟性を持たせるために「可塑剤(フタル酸エステル類など)」と呼ばれる液状の添加剤が大量に練り込まれています。安価な文具用テープや粗悪な製品では、時間の経過や家電の通電熱によってこの可塑剤が表面に染み出す「ブリードアウト」が発生します。染み出た可塑剤が粘着層を侵食して液状化させ、あの特有のドロドロした粘着剤残り(ベタつき)を生み出すのです。
電設のプロが選定する銘柄、例えば積水化学工業のエスロンテープやスリーエムの3M電気絶縁テープ(Scotchブランド)は、可塑剤の移行を抑える分子設計が施されています。粘着剤にも経年劣化に強い特殊合成ゴムが採用されており、経年劣化ベタつき防止性能において圧倒的な差を見せます。数年後に点検や巻き直しを行う際、容易に剥がせるか、それとも導線が腐食・汚損しているかは、最初のテープ選定だけで決まるのが現場のリアルです。