羽生善治が打ち立てた99期という記録と、藤井聡太が突き進む空前絶後の記録更新ペース。両者の偉業達成の裏には、時代背景の大きな違いが存在する。羽生時代の強みが、天性の直感と膨大な実戦データに基づく大局観であったとするなら、藤井の強みはAI(人工知能)を活用した圧倒的に深遠な事前研究と、終盤における精密機械のような正確さだ。
現代の将棋は、序盤の数千手に及ぶ分岐がAIによって解明されつつある。そのなかで藤井は、コンピュータの示す評価値を人間が運用可能なレベルまで落とし込み、独自の勝負術へと昇華させた。この技術的イノベーションこそが、彼が驚異的なペースでタイトル戦を制し続ける最大の真相といえる。