ピザの価格設定には、幾何学的な錯覚を利用した巧妙な構造が隠されています。円の面積は「半径 × 半径 × 円周率」で計算されるため、直径の数値が少し大きくなるだけで、実際の可食面積は急激に増大します。
具体的に数字を比較してみましょう。直径23cmのSサイズ(面積約415cm²)に対し、直径32cmのLサイズ(面積約804cm²)は、直径で見れば約1.39倍に過ぎません。しかし面積比で見ると、LサイズはSサイズの約1.94倍、ほぼ2倍の大きさになります。さらに直径40cmのニューヨーカー(面積約1,256cm²)に至っては、Sサイズの約3.02倍もの巨大さを誇ります。
ここで重要なのが販売価格とのバランスです。ドミノ・ピザの代名詞とも言える「お持ち帰り半額™」を適用した場合、定番の「ドミノ・デラックス」を例にとると以下のような価格差になります。
- Sサイズ:テイクアウト約1,240円前後(1cm²あたり約2.98円)
- Mサイズ:テイクアウト約1,590円前後(1cm²あたり約2.77円)
- Lサイズ:テイクアウト約1,940円前後(1cm²あたり約2.41円)
- ニューヨーカー:テイクアウト約2,100円前後〜(1cm²あたり約1.67円〜)
1平方センチメートルあたりの単価を割り出すと、サイズが上がるごとに明らかな割安傾向を示し、ニューヨーカーやLサイズのコストパフォーマンスが圧倒的に高くなります。Sサイズを2枚買うと約2,480円で面積約830cm²ですが、Lサイズなら約1,940円で約804cm²が手に入ります。つまり、同一フレーバーをお腹いっぱい食べたい場合、小さいサイズを複数頼むのは金銭的に最も損をする頼み方になります。
ただし、ここには行動経済学的な落とし穴も存在します。「単価が安いから」という理由だけで無理にLサイズを頼み、冷めて硬くなったピザを残してしまったり、複数種類のフレーバーを味わう満足感を犠牲にしてしまっては本末転倒です。純粋なボリューム対価格を追求するならLサイズ以上、食事としての楽しさや食べ切りやすさを優先するならSやMの組み合わせという明確な使い分けが求められます。