本作の最大の醍醐味の一つが、実力派俳優たちがトリプルキャスト・ダブルキャストで紡いできた「37歳のハリー・ポッター像」の比較です。原作者J.K.ローリングらが描いたのは、魔法界の英雄として崇められながらも、過去のトラウマに怯え、思春期の息子との接し方に苦悩する等身大の父親の姿でした。歴代キャストはそれぞれ異なるアプローチでこの複雑な内面を体現しています。
開幕初期を牽引した藤原竜也は、持ち前の爆発的な感情表現と悲痛な叫びによって、英雄が抱える精神的な孤独と脆さをむき出しに演じ、観客を劇空間へ一気に引き込みました。続く石丸幹二は、劇団四季出身ならではの気品とノーブルな佇まいをベースに、大人としての威厳と父親としての葛藤を繊細なグラデーションで表現。舞台俳優としての重厚な説得力をもたらしました。
一方、向井理はスタイリッシュな立ち姿の奥に冷徹さと不器用さを滲ませ、息子アルバスとの間に横たわる「埋まらない距離感」をリアルに体現。藤木直人は温かみのある父親像の中に知性と苦悩を共存させ、吉沢悠らは等身大の人間味と静かな狂気を緻密に構築しました。キャストスケジュールによって劇場全体の空気感が劇的に変化するため、リピーターの間では「どのハリーで観るか」が常に熱い議論の対象となっています。