毎年7月7日の七夕行事において、短冊を吊るす植物として「笹竹」が用いられます。なぜ巨大な竹ではなく、あえて笹が神事や年中行事の主役に選ばれてきたのでしょうか。
民俗学的な背景には、古来日本人が笹に宿ると信じた強烈な生命力と神聖性があります。笹は寒冷地や雪の下でも青々とした葉を維持することから、神が降臨する依り代(よりしろ)として神道儀礼で重用されてきました。さらに、笹の葉には安息香酸などの抗菌・防腐成分(ササポリフェノール)が豊富に含まれており、笹寿司やちまきに見られるように、古くから疫病や穢れを祓う清浄な植物とみなされてきた歴史があります。
実用面においても、民家の軒先や寺子屋の屋内で飾る際、硬く巨大な竹に比べて、笹はしなやかで枝葉が密集しており、短冊を結びつけやすく扱いやすいという利点がありました。神聖な抗菌力としなやかな実用性が融合した結果、七夕飾りには笹が定着したのです。