製菓の現場やネット上の質問箱で頻繁に見受けられる致命的な誤解が、「食品だからとりあえず冷蔵庫に入れておけば長持ちする」という思い込みです。
家庭用冷蔵庫の庫内は湿度が約40〜70%程度あり、食材の開閉によって常に湿度が上下しています。また、クッキーに含まれる多量のバターは周囲の匂いを吸着しやすい性質(吸臭性)を持っています。冷蔵庫にクッキーを入れると、以下の3重苦に陥ります。
・冷蔵庫から取り出した瞬間の温度差で表面に細かい結露が生じ、一瞬で湿気てボソボソになる。
・冷気によってバターが硬化し、口溶けの滑らかさが消失する。
・庫内の食材(ネギ、ニンニク、魚など)の匂いが油脂に移り、風味が台無しになる。
また、手作りクッキーの夏場の保存注意点も見落とせません。気温が25℃を超え、湿度が60%を超える日本の梅雨〜夏季は、常温放置するとわずか2〜3日でバターの酸化が進み、油臭さ(過酸化物価の上昇)が発生します。夏場に常温で保管する場合は、エアコンの効いた24℃以下の部屋を確保するか、食べる分だけ小分けにして冷凍保存するのが鉄則です。
さらに、見た目が華やかで人気のあるアイシングクッキーの日持ちにも落とし穴があります。表面が乾いているように見えても、内部のアイシングクリームに水分が残っていると、ベースのクッキーが水分を吸って柔らかくなり、カビの原因菌が繁殖しやすくなります。アイシングを施した後はフードドライヤー等を使って芯まで完全乾燥させ、乾燥剤を入れた密閉袋で保管した上で、3〜5日以内に食べ切るのがプロの現場における安全基準です。