遠藤雄弥のキャリアは、日本のエンターテインメント史におけるユースカルチャーの変遷そのものです。1998年、映画『ジュブナイル』などで子役として頭角を現した彼は、2000年代初頭に爆発的な社会現象となった2.5次元ミュージカルの嚆矢、ミュージカル『テニスの王子様』の主人公・越前リョーマ役に抜擢されました。
その後、若手俳優集団「D-BOYS」の初代リーダーに就任。ユニットの精神的支柱としてグループを牽引しながら、ドラマ『のだめカンタービレ』や『ボイス 110緊急指令室』など話題作に出演を重ねます。しかし、彼が真価を発揮したのは、アイドル的熱狂の渦中から自ら一歩踏み出し、単身で映画の世界へと身を投じた2010年代以降でした。その決定打となったのが、2021年のフランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本合作映画『ONODA 一万夜を越えて』(アルチュール・アラリ監督)です。
フィリピンのジャングルで約4ヶ月に及ぶ過酷な長期ロケに挑んだ『ONODA』では、小野田寛郎の青年期を怪演。極限状態における狂気と信念を、削ぎ落とされた肉体と台詞に頼らない眼差しの演技で表現し、カンヌの公式上映では満場のスタンディングオベーションを浴びました。「元2.5次元俳優」という過去の文脈を完全に超越したこの国際的成果は、彼の俳優人生における決定的な分岐点となったのです。