物語のクライマックス、放課後の屋上で繰り広げられる映画部とバレー部、そして宏樹グループの衝突は、日本青春映画屈指の歴史的名シークエンスです。前田涼也(神木隆之介)率いる映画部は、顧問に押し付けられた軟弱な青春ドラマの脚本を蹴り飛ばし、自らの愛する8ミリフィルムで自主制作ゾンビ映画『生徒会長・オブ・ザ・デッド』の撮影に没頭していました。
彼らが撮影場所に選んだ屋上へ、「桐島が屋上にいるらしい」という真偽不明の噂を聞きつけたバレー部や梨紗、宏樹らが雪崩れ込んできます。土足で聖域を侵犯され、撮影を愚弄された前田は、キャメラのレンズを向けながら映画部員たちに咆哮します。「お前たち、あいつらを食い殺せ!」。特殊メイクを施したゾンビ役の部員たちが、カースト上位者たちへ襲いかかり、首筋に食らいつく妄想と現実の交錯。このカタルシス溢れる乱闘劇には、空間演出と階層構造の明確な意図が組み込まれています。
映画部はこれまで、教室や廊下ですれ違うたびに上位グループから嘲笑され、スペースを奪われてきました。しかし、自分たちが表現者として統べる屋上というフレームのなかでは、カーストの上下関係は一切通用しません。フィクションの力を用いて現実のヒエラルキーに牙を剥くこの乱闘は、単なるケンカではなく、虐げられてきた者たちが己の尊厳を奪還する儀式でした。