多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の核心にあるのは、卵巣内で多数の卵胞が育ちながらも、一定の大きさで発育が止まり排卵がスムーズに起こらなくなる「排卵障害」です。本来であれば月に1度、ひとつの成熟卵胞が破裂して排卵に至るはずが、卵巣の皮膜が硬厚化し、超音波検査で確認すると小さな卵胞が数珠状に連なる「ネックレスサイン」を呈します。
日常生活で自覚しやすい最も顕著なサインが、多嚢胞性卵巣症候群による「生理こない」状態(希発月経・無月経)です。周期が39日以上空いてしまう、あるいは年に数回しか生理が訪れないというパターンが典型的です。たまに出血があったとしても、排卵を伴わない「破綻出血(無排卵月経)」である場合が多く、毎朝記録する多嚢胞性卵巣症候群の基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれず、平坦な一相性のグラフを描き続けることで発覚します。
ホルモンの乱れは外見にも容赦なく影を落とします。脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)の過剰や卵巣局所での男性ホルモン(アンドロゲン)産生の上昇により、多嚢胞性卵巣症候群では「にきび・毛深い」といった男性化兆候が現れやすくなります。フェイスラインや顎下に繰り返し生じる炎症性の大人ニキビ、口ひげやすね毛、へそ周囲の毛が濃くなるといった変化は、皮膚科に通院しても根本解決に至らない代表例です。
代謝機能の低下も連動します。血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性を背景に、多嚢胞性卵巣症候群になると「太る」「食事制限をしても体重が落ちにくい」という悩みを抱える方が少なくありません。皮下脂肪だけでなく内臓脂肪が蓄積しやすい代謝環境へと傾くため、脂質異常症や将来的な糖尿病予備軍のリスクも内包しています。