本作は、1949年のアメリカ初版刊行翌年に、優れたアメリカの絵本に贈られる最高峰の栄誉コールデコット賞(1950年 Caldecott Honor Book)を受賞しました。画家マーク・サイモントの繊細かつ力強い描線は、当時の絵本界に鮮烈な印象を与えました。日本国内では、児童文学の巨星である石井桃子の翻訳により、1967年に福音館書店の「世界傑作絵本シリーズ」の一冊として世に送り出され、現在に至るまで版を重ねています。
季節の移り変わりや自然の息吹を描いた名作絵本群のなかでも、本作は際立った構成美を誇ります。同時期や同ジャンルの代表的絵本との比較から、その特異性が浮き彫りになります。
石井桃子の翻訳における特徴は、英語の原詩が持つリズミカルな息遣いを、一切の停滞なく日本語の音韻へと落とし込んでいる点です。「ゆきの なかで」「めを さます」「はしる はしる」。無駄な修飾語を削ぎ落とした動詞主体の文体が、マーク・サイモントの柔らかくも躍動感のある木炭画と完璧に共鳴しています。