知床五湖フィールドハウスが運用する利用規制は、単なる観光地のルールにとどまりません。観光社会学やエコツーリズムの視点から見ると、「原生自然の保全」と「持続可能な観光利用」を高次元で両立させるための世界的な先進モデルといえます。
かつて知床五湖では、無秩序な観光客の踏み付けによる高山植物の荒廃や、ヒグマへの餌付け・不用意な接近による人身事故の危機が深刻化していました。そこで導入されたのが、利用者の数と行動をコントロールする「利用調整地区制度」です。入場料やガイド料を支払ってレクチャーを受けるというプロセスは、人間が自然界の「客人」であることを再認識させ、野生動物との健全な心理的バウンダリー(境界線)を構築する教育的機能を果たしています。
知床五湖を訪れるにあたり、どのような散策スタイルを選択すべきか、以下の判断基準を参考にしてください。
【地上遊歩道(ガイドツアー含む)をおすすめできる人】
・知床の原生林や野生動物の生態系を五感で深く体感したい人
・滑り止めの効いた靴や雨具など、基本的なトレッキング装備を用意できる人
・片道1時間半〜3時間の山道歩行に耐えうる基礎体力がある人
・ヒグマ出没による急な散策中止や引き返しを冷静に受け入れられる人
【高架木道のみの利用に留めるべき人】
・所要時間40分〜1時間以内でサクッと絶景を眺めて移動したい人
・サンダルやパンプス、軽装の旅行着で訪れている人
・小さな子ども連れや、車椅子・ベビーカーを利用したいファミリー
・野生動物との遭遇リスクを完全にゼロにして安心して散策したい人