「ピルで女性らしくなる」という言説が広まる背景には、配合されているエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の生理作用が関係しています。低用量ピルはこれら2種類の女性ホルモンを体外から補うことで、脳の視床下部や下垂体に「すでにホルモンは十分に分泌されている」と錯覚させ、排卵を停止させる仕組みです。
この血中ホルモン濃度の変化によって、思春期の二次性徴期に似た生体反応が一時的に引き起こされます。具体的には、プロゲステロンの作用による水分貯留(むくみ)や、エストロゲンによる乳腺組織への微弱な刺激です。これらが重なり合うことで「ボディラインに柔らかみが出た」「肌がしっとりした」と感じる人が現れ、ネット上で「女性らしくなる薬」として誇大に語り継がれる結果となりました。
しかし、これはホルモン環境の一時的な修飾に過ぎません。特にネット掲示板などで散見される「ピルで骨盤が広がって女性らしい体型になる」という噂について、産婦人科の臨床現場では完全な誤謬と断定されています。骨盤の骨構造格は思春期の骨端線閉鎖とともに成人時点で固定されており、成人女性がホルモン剤を服用しても骨格そのものが変化する医学的根拠は一切ありません。