華々しいスター街道を歩んできたように見える松平健だが、その足跡は泥臭い下積みから始まっている。愛知県豊橋市から上京し、石原プロモーションの研修生などを経て劇団の門をたたいた若き日の彼は、決して最初から恵まれた環境にいたわけではない。
転機となったのは、昭和の大スター・勝新太郎との出会いだ。勝が主宰する「勝プロダクション」に入信した彼は、巨匠の身の回りの世話をしながら芝居の真髄を叩き込まれた。付き人としての毎日は過酷を極めた。勝の気まぐれに付き合い、深夜まで酒席に付き添い、早朝から現場の準備に追われる。だが、勝新太郎という規格外の才能を間近で見続けた経験こそが、俳優としての骨格を作り上げた。
「役者は型にはまるな」「男の生き様を演じろ」。大先輩からの叱咤激励を受けながら、彼は黙々と稽古に励んだ。厳しい劇団時代の苦労と師弟関係の絆が、のちの大化けを支える強固な土台となったのは間違いない。