両者のサイズ差も圧倒的だ。細菌の大きさは通常1〜5マイクロメートル程度で、光学顕微鏡でも観察できる。これに対し、ウイルスはその100分の1から1000分の1、わずか数テン〜数百ナノメートルという極小世界に存在する。電子顕微鏡の発明を待たねば、その姿を捉えることすら不可能だった。
世界的な医学文献データベースであるPubMedに蓄積された無数の最新研究は、ウイルスと細菌の境界線が「生命とは何か」という根源的な問いに直結していることを示している。自力で代謝を行いエネルギーを生み出す細菌は紛れもない生命だが、代謝を行わず他者の細胞内でしか増殖できないウイルスは「生命と無生物の狭間を漂う存在」と定義されることが多い。
臨床の現場で世界標準とされるMSDマニュアルにおいても、これら両者の感染メカニズムの違いは明確に区分されている。ウイルス感染では侵入された宿主細胞そのものを破壊または免疫系で排除する必要があるのに対し、細菌感染では細菌自体の増殖を抑えるアプローチが基本となる。この違いを理解しない治療戦略は成り立たない。