店内に一歩足を踏み入れてまず目を引くのが、壁一面に掲げられた巨大な黒板メニューだ。そこに書かれた魚の銘柄は、その日の朝に保田漁港で何が揚がったかによって目まぐるしく変わる。アジやサバといった定番はもちろん、時には相模湾や東京湾の深海から引き揚げられた珍しい地魚の名が並ぶこともある。
「うちの強みは、セリ場から厨房までの距離がゼロに等しいこと。水揚げされた魚をその場で捌くから、歯ごたえと甘みが段違いなんだよ」。長年包丁を握るベテラン料理人はそう語る。定番の刺身盛り合わせを頼むと、分厚く切られたカンパチや鯛、透き通ったイカが皿狭しと踊る。一口含めば、弾力のある身から海の旨味が溢れ出し、遠方から時間をかけて足を運んだ甲斐があったと誰もが実感するはずだ。