大島の名を世界に決定づけた記念碑的傑作が、1983年公開の『戦場のメリークリスマス』だ。第二次世界大戦下のジャワ島俘虜収容所を舞台に、極限状態に置かれた男たちの相克と惹かれ合いを描いた本作は、映画史に残る異色のキャスティングによって伝説となった。
主演に抜擢されたのは、世界的ロックスターのデヴィッド・ボウイと、当時イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)で世界を席巻していた坂本龍一。本職の俳優ではない2人のカリスマを前面に据える采配は、映画界を大いに驚かせた。坂本龍一は出演の条件として「劇伴音楽を自分が担当すること」を提示し、大島はそれを快諾。あの不朽の名曲「Merry Christmas, Mr. Lawrence」が誕生する契機となった。
南太平洋のラロトンガ島で行われた撮影は、熱気と過酷さが交錯する修羅場だった。大島は現場で猛烈な怒号を飛ばすことで知られていたが、ボウイと坂本に対しては一切怒鳴らず、彼らの直感的な演技を最大限に尊重したという。日本軍将校ヨノイと英国軍将校セリアズが対峙するクライマックス、死刑執行の瞬間に交わされるキスシーンは、台本を超えた役者同士の磁場が生み出した映画的奇跡だった。