ネット上の旅行相談掲示板などで散見される典型的な誤解の一つに、「海中道路という名前だから、海の下を通るトンネルだと思っていた」という認識のズレがあります。海中道路は海底トンネルではなく、遠浅の海に土砂を盛り固めて築かれた全長4.75kmの浅瀬堤防道路(土手道)です。
この道路の誕生背景には、離島住民の過酷な歴史と切実な願いが存在します。かつて平安座島をはじめとする周辺離島の人々は、干潮時に浅瀬を歩いて渡るか、満潮時に小型船(渡し舟)に頼る生活を余儀なくされていました。急患の搬送や台風時の孤立など、厳しい環境を打破するため、1970年代初頭に住民自らが手押し車やトラックで石を海へ投げ込み、手作りで基礎を築いた「住民総出の道づくり」が海中道路の原点です。
その後、石油備蓄基地の誘致や県道昇格(県道10号線)を経て、現在の片側2車線の高規格堤防道路へと整備されました。単なる観光インフラではなく、人々の生活と歴史の結晶であることを理解してハンドルを握ると、目の前に広がる水平線の重みがまったく違って見えてきます。