ハライチというコンビを語る上で避けて通れないのが、相方・岩井勇気との数奇な関係性の変化です。二人は幼稚園からの幼馴染であり、中学校の同級生として原市の地で青春時代を共に過ごしました。ワタナベコメディスクールを経て若くしてM-1グランプリ決勝に進出した際、世間のスポットライトを真っ先に浴びたのは強烈なツッコミとリアクションを誇る澤部でした。
2010年代前半、澤部ばかりがピンでバラエティに呼ばれ、岩井が楽屋で待機する「コンビ間格差」が顕著だった時期があります。当時は不仲説や解散危機が週刊誌やネット掲示板で面白おかしく書き立てられました。しかし、当時の特番インタビューや手記で語られた通り、澤部は一度たりとも岩井のネタ作りや才能を軽視しませんでした。むしろ「ネタを作っているのは岩井だから、自分は外で稼いでコンビの名前を売る」という明確な役割分担を腹の底で引き受けていたのです。
その後、岩井のエッセイ執筆やアニメ分野での独自ポジション確立、そして2026年の結婚発表などを経て、コンビのパワーバランスは理想的な対称性を獲得しました。2026年にスタートした『ぽかぽか』では、自由奔放に毒を吐く岩井と、それを瞬時に拾い上げてスタジオ全体を爆笑に変える澤部の呼吸が円熟味を見せています。幼少期からの絶対的な信頼があるからこそ、どんなに尖った掛け合いも不快感を与えずに成立します。