旧日本銀行小樽支店の真価を解剖!辰野金吾の名建築と1億円体験の深層

旧日本銀行小樽支店の真価を解剖!辰野金吾の名建築と1億円体験の深層

旧日本銀行小樽支店の真価を解剖!辰野金吾の名建築と1億円体験の深層の要点や背景を丁寧にまとめました。全体像を一目で把握できます。

日本銀行旧小樽支店の建築を語る上で欠かせないのが、設計陣の豪華さです。総指揮を執ったのは、日本銀行本店(東京・日本橋)や東京駅丸の内駅舎を設計した明治建築界の重鎮・辰野金吾。そして、後に日本銀行技師長として数多くの銀行建築を残した愛弟子・長野宇平治、さらに明治生命館などで知られる岡田信一郎が参画しました。

外観は、左右対称(シンメトリー)の美しさを際立たせたルネサンス様式を基調としています。一見すると重厚な石造りに見えますが、構造自体は煉瓦造りであり、外壁にはモルタルを塗り重ねて石目地を刻む特殊な左官技術が用いられています。これは寒冷地特有の凍害を防ぎつつ、工期短縮と堅牢性を両立させるための先進的な工法でした。

屋根には緑青色の優美なドームが配されており、角の円形ドームと中央の八角ドームを合わせて5つのドーム冠が空へと伸びています。また、外壁の軒下やアーチ窓の装飾を注視すると、ギリシャ神話の意匠に加えて「エゾフクロウ」を模したレリーフが刻まれているのが確認できます。フクロウはアイヌ文化において「コタンコロカムイ(村を守る神)」として敬われ、西洋では「知恵の神(ミネルヴァのフクロウ)」とされる存在。夜間も目を光らせて財産と街を守る銀行の守護神として、辰野らが北海道の地域性に敬意を払い組み込んだ粋な演出です。

館内に入ると、吹き抜けになった旧営業室の天井の高さ(約10.5m)と開放感に圧倒されます。柱のない広大なフロアを支えるため、当時の最新鋭技術であったイギリス製・八幡製鉄所製の鉄骨トラス構造が導入されました。さらに、窓の配置や漆喰壁の傾斜による音響効果も計算されており、かつて窓口で交わされる声が館内に適度に響き渡る構造になっていた点も見逃せません。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。