喫茶翡翠の名声を一段と押し上げた要素として、映画やテレビドラマのロケ地としての実績が挙げられます。京都を舞台にした映像作品において、昭和の薫りを色濃く残すロケーションとして幾度となくスクリーンに登場してきました。
代表的な作品としては、小林聡美主演の映画『マザーウォーター』(2010年公開)が知られています。穏やかな京都の日常を描いた同作の中で、登場人物たちが語り合う印象的な場面に喫茶翡翠が使用され、作品ファンにとって聖地巡礼の定番スポットとなりました。さらに、刑事ドラマやサスペンス、アーティストのミュージックビデオなどでも頻繁に撮影が行われています。
美術関係者や映像クリエイターがこぞって翡翠を選ぶのは、単に古いからではありません。磨き上げられたパーテーションの木目、経年変化によって味わいを増した真鍮の金具、独特の幾何学模様が施されたフロアタイルなど、細部に宿る職人技の密度がCGやセットでは再現できない重厚感を醸し出しているからです。店内に足を踏み入れた瞬間、誰もがまるで銀幕の世界に入り込んだかのような錯覚を覚えるのは、こうした本物の建築美が息づいている証拠です。