戦後の日本の税制史は、まさに「直間比率(税収全体に占める直接税と間接税の割合)」をめぐる激闘の歴史そのものです。
1950年のシャウプ勧告以来、日本は徹底した直接税中心の国税構造を採用し、昭和の高度経済成長期には直間比率が「約7対3」から「約8対2」に達するほど直接税に偏重していました。好景気によって給料が右肩上がりに伸びていた時代は、累進課税によって国税収入が自然増し、財政は潤っていたのです。
しかし、バブル経済の崩壊と少子高齢化の到来が構造転換を迫りました。現役世代の人口が急減する中で所得税に依存し続けると、働く世代だけに過度な負担が集中してしまうためです。そこで歴代政権は「直間比率の是正」を掲げ、所得税減税と引き換えに1989年に3%で消費税を創設。その後、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%へと段階的な引き上げを断行しました。現在では、国税ベースの直間比率はほぼ「6対4」前後にまで接近し、地方税を合わせるとバランスはさらに均衡しています。
そして2023年10月に導入された消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、間接税の実務環境に地殻変動をもたらしました。導入当初に激しい反発を呼んだ免税事業者の取引排除問題や、小規模事業者の事務負担増大は、導入から年月を経た2026年現在、免税事業者向けに設けられていた経過措置(売上税額の2割を納付すればよい「2割特例」など)の段階的縮小と相まって、新たな選別の局面を迎えています。
国税庁の最新統計や報道各社の取材データを総合すると、フリーランスやひとり親方の多くが課税事業者への転換を余儀なくされ、結果として「本来間接税であるはずの消費税が、実質的に小規模事業者の利益を削る直接的なコストとして重くのしかかっている」という現場の悲鳴は今なお解消されていません。
さらに2026年現在の税制議論では、物価高騰に伴う「103万円の壁」見直しをはじめとする所得税の基礎控除引き上げ議論や、防衛財源確保のための法人税・所得税の付加税導入など、直接税の再編が大きな焦点となっています。間接税をこれ以上引き上げる政治的ハードルが極めて高い中、再び直接税の取り方にメスが入るという歴史の揺り戻しが起きているのです。