当初、法曹関係者の間でも「海外運営のオンラインカジノで消費された資金を回収するのは極めて困難」との見方が大勢を占めていました。しかし阿武町側は、極めて迅速かつ緻密な法的手続きを展開し、事態を急転させました。
回収の最大の鍵となったのは、「オンラインカジノ本体」ではなく「国内の決済代行業者」をターゲットにした法的スキームです。海外カジノで遊戯する場合でも、ユーザーが入出金を行う際は日本国内に拠点や提携銀行口座を持つ決済代行業者が介在します。阿武町の代理人弁護士は、田口氏の口座履歴を詳細に追跡し、送金先となっていた決済代行業者3社を特定しました。
町側弁護士は、決済代行業者が管理する国内銀行口座に対して民事保全法に基づく仮差押命令の申立てを裁判所に申請。同時に、犯罪収益移転防止法や組織犯罪処罰法、賭博幇助の観点から「違法な資金移動に関与した責任」を追及する構えを強く示しました。
決済代行業者側としては、自社の国内銀行口座が凍結されて業務停止に追い込まれるリスクや、マネーロンダリングへの関与を疑われて刑事責任を問われるリスクを避ける必要がありました。その結果、業者側が町の請求に応じ、預かっていた資金から約4299万円を阿武町へ返還することに同意したのです。残る約340万円についても、田口氏の口座に残されていた残金や代理人を通じた弁済により、最終的に誤送金額と同額が町へ戻る結果となりました。