コンマ表記と万進法のズレは、実際のオフィスワークにおいてどれほどのトラブルを引き起こしているのでしょうか。財務会計やシステム開発、貿易事務などの現場からは、冷や汗をかいたリアルなトラブル事例が数多く報告されています。
都内大手金融機関のバックオフィス担当者は、かつて社内で起きたヒヤリ・ハット事案について次のように証言しています。
「海外の取引先から送られてきた英文のインボイスに『$1.5M』と記載されていたのを、新人担当者が誤って1,500万円(15 Million=1,500万という思い込み)と解釈して日本円換算の稟議書を回してしまった。実際には1.5 Millionドルなので約2億3,000万円。上長の最終承認直前に発覚したため資金ショートは免れましたが、一歩間違えれば巨額の違約金が発生する大事故でした」
また、IT業界のエンジニアコミュニティでも、「K(キロ=千)」「M(メガ=百万)」「B(ビリオン=十億)」の略記と、日本円の「万・億」をリアルタイムで口頭換算する会議の席で、桁を1つ間違えた見積もりを出してしまい大問題になったという苦い告白が後を絶ちません。認知心理学の観点からも、人間の脳は「視覚的な区切り(コンマ)」と「発話のリズム(4桁)」が不一致を起こすとワーキングメモリに極度の負荷がかかることが実証されています。感覚に頼らず、機械的な換算ルールを設けることが防衛策として不可欠です。