通信インフラの現場で無数の端末をさばく電気通信事業のエンジニアたちは、力任せの作業を絶対にしない。NTTドコモのショップスタッフや端末修理の熟練者が実践しているのは、徹底した「静電気除去」と「作業面の一角確保」だ。冬場や乾燥した室内では、指先から放たれる微小な放電が、SIM内部のICチップを一瞬で焼き切る可能性がある。作業前に金属製のドアノブや机の脚に触れて放電を済ませるのはプロの基本動作だ。
トレイを完全に引き抜く直前、端末を裏返しにして作業するのも現場の裏技だ。現在主流のnano-SIMは爪の先ほどのサイズしかなく、トレイの枠に乗っているだけの状態に近い。画面を上に向けたまま水平を失うと、デスクの隙間や絨毯の奥底へと滑り落ち、行方不明になる。本体をわずかに傾け、指の腹で受け止めるようにトレイを抜くことで、落下による端子面の皮脂汚れや傷つきを未然に防ぐことができる。