石田彰が演じるキャラクターの魅力の核心は、「聴覚を通じた心理的距離の操作」にあります。その端緒となったのが『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲルです。初登場となったテレビシリーズ第24話の台詞量は決して多くないものの、主人公・碇シンジの孤独に寄り添いながらも人間を超越した存在であるという二面性を、囁くような抑揚と絶妙な間(ま)で表現し、アニメ史に刻まれる衝撃を残しました。
一方で、2020年代のエンタメシーンを席巻した『鬼滅の刃』の猗窩座では、従来の繊細なイメージを鮮やかに裏切る獰猛な武闘派としての迫真劇を披露。音響監督や共演陣のインタビューでも語られている通り、闘争の快楽に酔いしれる狂気の叫びと、武の極致を求める純粋さ、そして後に明かされる悲劇的な生い立ちの影を同居させた芝居は、劇場空間の空気を一変させました。
静から動へ、神聖な静けさから泥臭い感情の爆発へ――この極端なダイナミズムを不自然さなく成立させる声帯コントロールこそ、石田彰という役者の特筆すべき強みといえます。