初対面の人と出身地や趣味、あるいは愛読書が同じだと知った瞬間、思わず声のトーンが上がり、それまでの警戒心がふっと解けた経験を持つ人は多いはずです。この現象は心理学において「類似性の法則(Law of Similarity)」として広く実証されています。人間には、自分自身の態度、信念、価値観、生い立ちなどに類似した特徴を持つ他者に対して、無意識のうちに好意や親近感を抱く強力な心理的バイアスが備わっています。
アメリカの社会心理学者ドン・バーン(Donn Byrne)らが提唱した魅力研究によると、相手との類似点の割合が高まれば高まるほど、好意度も直線的に上昇することが判明しています。人間関係において共通点が多い人の心理を探ると、自己のアイデンティティや判断基準が他者によって承認され、「自分は正しい」という安心感(認知的斉合性)を得られる点が挙げられます。自分と似た人間は予測可能性が高く、危害を加えられるリスクが低いと本能的に察知するため、防衛本能のブレーキが外れるのです。
コミュニケーションの初期段階でこの心理を活用することが、信頼関係の基盤であるラポール形成のコツに直結します。精神分析家やカウンセラーが相談者との間で最初に行うのも、呼吸の深さや言葉遣い、姿勢などを合わせるペーシングであり、これも広義の「身体的な共通点づくり」に他なりません。人間関係の扉を開く鍵は、常に相手との共通項の中に隠されています。