数値上の安全が確認できたとしても、実際のダム湖周辺や現場の状況はどう映っているのでしょうか。相模湖や丹沢湖周辺の観光事業者、地元住民への聞き取りからは、都市部で騒がれる「ネットの渇水パニック」とは対照的な実態が見えてきます。
相模湖周辺で貸しボート業を営む関係者は、次のように証言します。
「毎年夏前になると『相模湖の水が干上がって船底が着きそうだ』と心配して電話をかけてくるお客さんがいます。でも、これは津久井ダムへの送水調整や梅雨前の放流で毎年当たり前に起きる光景です。地元の人間からすれば『今年もこの季節が来たな』という程度で、水不足という感覚はまったくありません」
また、宮ヶ瀬湖の鳥居原エリアを日常的に訪れるドライブ客や地元住民のコミュニティでも、冷静な観察が定着しています。掲示板やSNSを精査すると、「確かに湖畔の古い橋脚が顔を出しているが、宮ヶ瀬は深さが桁違いだから湖底の土が見えるのは通常運転」「テレビのニュースで他県の渇水(利根川水系など)が流れると、なぜか神奈川のダムまで危ないと勘違いして買い占めに走る人が出る」といった、冷静な指摘が多くを占めています。
現地を実際に歩くと、丹沢水系からの流入水は透明度が高く、堰堤(えんてい)からは定められた維持流量が淀みなく放流されており、渇水に特有の淀みや悪臭といった兆候は皆無です。