動物病院の現場やキャットシッターの取材を通じて見えてきたのは、「抱き上げる前のコミュニケーション不足」がトラブルを激化させているという動かぬ事実です。都内の動物病院に勤務する動物看護師は、現場での実感を次のように証言します。
「診察室でパニックになる子の飼い主さんを見ると、猫の背後からいきなり抱え上げたり、寝転がっているところを奇襲のように持ち上げたりするパターンが目立ちます。人間で言えば、くつろいでいる時に突然見知らぬ巨人に背後から羽交い締めにされるようなものです」
もし愛猫が腕の中で激しく抵抗し始めた場合、抱っこで暴れる猫の対処法として絶対にやってはならないのが「逃がすまいと腕の力を強めて締め付けること」です。猫は拘束圧が強まるほどパニックを深め、飼い主の顔や腕に深い引っ掻き傷を負わせるリスクが高まります。猫が身体を捩じらせたら、飼い主自身が腰を落として床に近づき、静かに腕を緩めて自発的に着地させてください。「暴れれば力づくで抑え込まれる」という恐怖記憶を作らないことが、長期的な信頼回復への最短ルートとなります。
また、抱っこされている最中に猫が抱っこでゴロゴロ鳴く心理についても注意深い観察が必要です。一般にゴロゴロ音は至福の表現と捉えられがちですが、動物行動医学では「低周波の振動を通じて自らの苦痛や極度の緊張をセルフ鎮静化させているケース」が確認されています。瞳孔が散大していたり、呼吸が浅く速い状態でゴロゴロ鳴いている場合は、安心しているのではなく、極度のストレスに耐えているサインであることを見逃してはなりません。