この表現が今日まで生命力を保ち続けた最大の功労者は、間違いなく伝統芸能・大衆演芸の世界である。明治の大名人として知られる三遊亭圓朝をはじめとする落語家たちは、人間の業や愚行を断罪するのではなく、愛すべき欠落として高座で描き出した。粗忽者が自らの愚かさに悶絶し、枕に顔を埋める代わりに「いっそ豆腐の角で……」とうめく姿は、観客の共感を誘う鉄板のクスグリ(笑いの仕掛け)として磨かれていった。
公益社団法人落語芸術協会に所属する現役の噺家も、「落語の本質は『人間の業の肯定』。豆腐の角というフレーズは、愚かな自分を笑い飛ばして明日も生きていくための、究極の免罪符なんです」と語る。高座から客席へ、親から子へと語り継がれるなかで、この言葉は単なる悪態を越え、日本人のメンタリティを象徴するポップアイコンへと鍛え上げられていった。