地方から上京し、東京という巨大なシステムに自己を最適化させようとする女性の欲望は、かつて東京カレンダー株式会社が仕掛けたドラマ『東京女子図鑑』によって鮮明に可視化された。三軒茶屋から恵比寿、銀座、そして港区へとグレードアップしていくライフスタイル。だが、あの物語が提示した「上昇志向の終着点」は、いまや形骸化している。
近年、SNSを中心に熱狂的な支持を集めた作家・麻布競馬場が紡ぎ出すショートストーリー群は、華やかさの裏に横たわる虚無と自己欺瞞を容赦なく暴き立てた。タワマンのゲストルームで開かれるパーティの虚飾、値札を見ずに注文するワインの空虚さ。もはや港区に群がる男女の生態は、憧れの対象ではなく、鋭利な社会問題ノンフィクションとして消費されるフェーズへと移行したのだ。