健康な成人男性における男性ホルモンと女性ホルモンの割合は、血中濃度においてテストステロンがエストロゲンの数十倍から百倍以上高く保たれています。この絶妙なパワーバランスがなぜ崩れてしまうのか、その主たる原因は体内の生化学的メカニズムに隠されています。
最大の要因は体脂肪(内臓脂肪)の増加に伴うアロマターゼの活性化です。脂肪細胞には「アロマターゼ」と呼ばれる酵素が豊富に存在し、血中のテストステロンをエストロゲンへと変換(芳香化)させる性質を持っています。つまり、太って脂肪組織が増えれば増えるほど、男性ホルモンが原料として消費され、女性ホルモンが大量生産されるという悪循環に陥るのです。
次に挙げられるのが、加齢に伴うテストステロンの自然減少です。男性ホルモンは20代後半をピークに年1〜2%のペースで緩やかに減少します。エストロゲンの分泌量が一定であったとしても、テストステロンの絶対量が落ち込むことで「相対的な女性ホルモン優位」が生じ、40代〜50代以降に体調不良や体型の崩れが一気に顕在化します。
さらに、肝機能の低下も重大な盲点です。エストロゲンは本来、肝臓で分解・代謝されて体外へ排出されますが、慢性的な過度飲酒や脂肪肝によって肝機能が鈍ると、エストロゲンが分解されずに血中に滞留し続けます。また、一部の降圧薬、前立腺疾患の治療薬、抗うつ薬、ステロイド系薬剤の副作用によってもホルモン環境の逆転が引き起こされることがあります。