なぜ、これほどまでに愛された女優が、突然この世を去らねばならなかったのか。夏目雅子 死因 急性骨髄性白血病との闘いは、まさに時間との苛烈な戦いでした。
発症の兆候が現れたのは、1985年2月。名立たる役者たちと共演していた舞台『愚かな女』の東京公演中でした。激しい頭痛と倦怠感に襲われながらも、彼女は舞台袖で倒れ込みそうになる身体を奮い立たせ、気力だけで演じ切りました。しかし、容態は限界に達し、2月15日に慶應義塾大学病院へ緊急入院。精密検査の結果、告げられた病名は血液のがんである「急性骨髄性白血病」でした。
夏目雅子 闘病生活 経緯を振り返ると、そこには過酷を極めた治療の実態があります。無菌室での抗がん剤治療により、激しい吐き気、高熱、そしてトレードマークでもあった豊かな黒髪が抜け落ちていきました。それでも彼女は鏡を見ては気丈に笑い、病室を訪れる母・スエや夫・伊集院静に弱音を吐くことはほとんどなかったと伝えられています。
懸命な治療が実を結び、一時は骨髄中の白血病細胞が消失する「完全寛解」を達成しました。退院と仕事復帰への希望が灯り、本人も関係者も快方に向かっていると信じて疑いませんでした。しかし、長期間におよぶ強力な抗がん剤治療は、彼女の体内から病原菌と戦う免疫機能を根こそぎ奪い去っていました。8月下旬、高熱を発して肺炎を併発。急速に容態が悪化し、9月11日午前4時35分、家族に見守られながら静かに息を引き取りました。夏目雅子 享年27歳。無菌室のベッドで過ごした205日間の孤独な闘いは、あまりにも早すぎる幕切れを迎えました。