平安時代、国家の中枢には官僚機構としての陰陽寮が厳然と存在していた。天変地異を予測し、暦を編纂し、怨霊の跳梁を防ぐ。彼らは決してファンタジーの住人ではなく、国家予算を動かし政争を裏で差配する生身のテクノクラートだったのだ。その頂点に君臨したのが、不世出の天才と称される安倍晴明である。
安倍晴明が確立したとされる五芒星の魔除けは、情緒的な祈祷の産物ではない。木・火・土・金・水の五行思想を極限まで抽象化し、互いを抑制し合う「相克」のネットワークを可視化した冷徹な防護システムだった。疫病や政変の恐怖が渦巻く平安の闇の中で、晴明はこの単純な線描を用い、貴族から庶民に至るまで広範な心理的支配を打ち立てたのである。