「私なんかが生きていてごめんなさい」――。そんな呪詛をノートにぶつける越前さんを演じた麻生久美子の芝居は、今見ても胸が痛むほどリアルだ。自分に自信が持てず、猫背で視線を落とし、誰にも言えない毒を漫画に吐き出す。
麻生は、過剰な演出に逃げることなく、指先の震えや声の掠れといった微細な身体表現で現代人の孤独を掬い取った。そんな彼女を静かに見守り、やがて「神様」の先輩として人生の哀歓を分け合う薬師丸ひろ子との掛け合いは、本作の白眉といえる。傷つけ合うのではなく、不器用なまま互いを認め合う工場の人間関係。そこには、社会の片隅で懸命に息をする人々への岡田惠和の優しい眼差しが注ぎ込まれていた。