作者である寺嶋裕二が描く御幸一也は、決して最初から完璧な超人として描かれているわけではない。『週刊少年マガジン』(講談社)での連載を通じて、先輩たちの引退や主将としての苦悩、そしてライバルたちとの死闘を経て、人間としてもキャプテンとしても成長を遂げていく様子が克明に描写されてきた。
名場面の裏側にあるのは、徹底的な取材に基づいた高校野球のリアリティだ。単なるヒーローとしてではなく、一人の高校生がプレッシャーと闘いながら泥にまみれて成長するストーリーがあるからこそ、御幸が見せる一瞬の「カッコいい姿」が読者の心に深く刺さるのである。