千代の富士の評価を不動のものとしたのが、当時の絶対的王者であった第55代横綱・北の湖敏満への挑戦と、その後に達成した昭和以降3位となる「53連勝」の大記録だ。「憎らしいほど強い」と称された北の湖に対し、小兵のウルフが全身の力を込めて立ち向かう姿は、まさに昭和の格闘ドラマそのものだった。
名勝負の数々は、単なる勝敗を超えた精神のぶつかり合いだった。相手の攻めを鋭い体さばきでかわし、一瞬の隙を突いて決める豪快な技。通算1045勝、幕内優勝31回という偉大な数字の裏には、ライバルたちとの死闘を通じて磨き上げられた一勝への執念が刻まれている。