和梨といえば、シャリシャリとしたみずみずしさと爽やかな酸味が持ち味ですが、彩玉がもたらすインパクトはその常識を根本から覆します。最大の武器は、一口食べた瞬間に口内を満たす濃厚な甘みです。一般的な幸水や豊水の平均糖度が11〜12度前後であるのに対し、彩玉は平均糖度13度〜14度に達します。酸味が極めて穏やかであるため、数値以上の甘みとコクが舌の上にダイレクトに伝わります。
この極上の甘みは偶然生まれたものではありません。埼玉県農林総合研究センター(現・埼玉県農業技術研究センター)園芸支場が、糖度の高さに定評のある「新水」と、大玉で果汁が豊富な「豊水」を交配し、選抜を重ねて1993年に育成、2004年に品種登録された由緒ある埼玉県オリジナル品種の梨です。育成から普及に至るまで丹念な品質管理が続けられてきました。
さらに特筆すべきは、その圧倒的なサイズ感です。通常の和梨が350g〜400g程度であるのに対し、彩玉の平均果重は約550g。大玉のものになると800g〜1kg近くまで成長します。ずっしりと重みのある果肉には果汁が限界まで蓄えられており、包丁を入れた瞬間に果汁がまな板へ溢れ出すほどのみずみずしさを備えています。大玉でありながら果肉のきめが細かく、芯の周りのザラつき(石細胞)が少ないため、可食部が多い点も高い評価につながっています。
これほどのポテンシャルを持ちながら「幻の梨」と呼ばれる最大の理由は、埼玉ブランド農産物としての厳格な品質管理と、栽培の難しさにあります。高品質な大玉を実らせるには徹底した摘果と樹勢管理が欠かせず、収穫できる期間も8月下旬から9月上旬のわずか2〜3週間ほど。県内農家を中心とした限定栽培を守り続けているため、市場への出荷量が極端に限られ、必然的に争奪戦が巻き起こる構造となっています。