多くのネトスト加害者が口を揃えるのは、「最初は軽い好奇心だった」「相手のことが心配だっただけ」という弁明です。臨床心理学や犯罪社会学の研究現場では、ネトストに走る人間の心理的プロセスには共通する歪みが存在することが指摘されています。
第一に挙げられるのが、「心理的バウンダリー(自他の境界線)」の崩壊です。健全な人間関係では「他者は自分とは異なる独立した存在であり、思い通りにはならない」という前提が機能します。しかし、ネトストに陥る人物は相手と自己を過剰に同一視し、相手の私生活や交友関係をすべて把握していないと気が済まない強い支配欲求を抱きます。特に元恋人や片思いの相手に対して、「自分には相手の動向を知る権利がある」という身勝手な特権意識を肥大化させていく傾向が顕著です。
第二に、認知の歪み(敵意帰属バイアスと被害者意識の逆転)が働きます。相手が何気なく投稿した日常の写真や言葉に対し、「これは自分への当てつけではないか」「自分以外の異性と会っているに違いない」と勝手に関連付けを行い、監視行動を正当化します。知恵袋やSNSの相談窓口に寄せられる当事者の手記には、「相手が楽しそうにしている姿を見るのが悔しくて、粗探しのために朝から晩まで更新を監視していた」という生々しい告白が散見されます。
さらに見逃せないのが、スマホ依存と連動したドーパミン報酬系のループです。新しい情報を得た瞬間に脳内で快楽物質が分泌され、特定が進むごとに達成感を覚えるため、ギャンブル依存と同様に自制が利かなくなります。「あと1回だけ確認したら寝よう」と思いながら深夜までスクロールを続け、気づけば相手のフォロワーの過去ログまで数年分遡ってしまう現象は、立派な行動嗜癖の一種です。