乃木坂46のパブリックイメージは、結成当初から一貫して「フレンチポップスのような透明感」「清楚なロングスカート」に代表される品格でした。従来のアイドルグラビアの王道であった男性誌の水着グラビアとは一線を画し、肌の露出を極力抑えるブランディングが徹底されていたのです。その鉄壁のイメージに最初の風穴を開け、乃木坂 写真集 ランジェリー 解禁理由として語り継がれる契機となったのが、2017年2月に講談社から刊行された白石麻衣2nd写真集『パスポート』でした。
当時、グループの絶対的エースであった白石麻衣さんが下着カットに挑むという一報は、アイドル界のみならず一般メディアにも大きな衝撃を与えました。しかし、関係者の証言や当時の制作ドキュメントを辿ると、これはグループのイメージチェンジを狙った安易なテコ入れではなく、緻密に計算された出版戦略であったことが浮かび上がります。
最大の理由は、「女性読者の共感と憧れの獲得」にありました。白石さんをはじめとする乃木坂46の主力メンバーは、早くから『Ray』『CanCam』『non-no』といった大手女性ファッション誌の専属モデルを務めていました。女性ファンから「美のアイコン」として支持されていた彼女たちにとって、洗練されたランジェリー姿は男性の視線を意識した性的な記号ではなく、海外のファッションフォトのような「ヘルシーで美しい身体表現」として昇華できたのです。
制作を手掛けたスタッフ陣も、女性ファッション誌の一線で活躍するカメラマンの中村和孝氏をはじめ、女性スタイリストやヘアメイクを起用。自然光を活かした柔らかいライティングと西海岸の開放的なロケーションによって、従来のグラビア特有の生々しさを完全に払拭しました。秋元康総合プロデューサーが寄せた「白石麻衣は、もう、どこへでも行ける」という帯文の通り、アイドルという枠組みのパスポート(越境許可証)を手に入れ、大人の表現者として脱皮するための必然的な選択だったのです。