しかし、映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を鑑賞した観客の多くは、ラストシーンで激しい違和感を覚えることになります。映画版では、ハリーが自分の杖を修復する描写が完全にカットされていたからです。
映画のエンディングにおいて、ハリーはホグワーツの崩壊した高架橋の上で、ニワトコの杖を躊躇なく素手でへし折り、そのまま谷底へと投げ捨てて物語を終えます。この衝撃的な改変に対し、公開当時から現在に至るまで、国内外のファンコミュニティ(5ch、Reddit、知恵袋など)では「ハリーの本来の杖はどうなったのか」「丸腰になってしまったのではないか」という疑問と批判の声が絶えませんでした。
制作陣の公式インタビューやメイキング証言によると、映画版でこの変更が行われた最大の理由は、「映画という2時間の尺の中で、ヴォルデモートを倒した直後のエモーショナルな熱量を途切れさせないため」でした。原作のように校長室へ戻り、肖像画と語り合いながら杖を修理するという内省的なシークエンスを挟むと、映画のクライマックスにおけるドラマツルギーが失速してしまうと監督のデヴィッド・イェーツらが判断したのです。
「強大な魔力への誘惑を完全に断ち切る」というメッセージを、言葉を持たない映像として最もダイナミックに伝えるために選ばれたのが「杖を折る」というアクションでした。しかし、その代償として「相棒だったヒイラギの杖への愛着」というハリーの重要な人間的側面が置き去りになってしまった点は、今なお議論の対象となっています。