シルバーストーンの原点は、1943年に建設された英国空軍(RAF)の爆撃機訓練用飛行場に遡ります。戦後、滑走路と誘導路を結ぶ外周路がレーストラックとして見出され、1948年に「RACインターナショナル・グランプリ」として初の公式レースが開催されました。そして1950年5月13日、F1世界選手権の歴史的第1戦「イギリスグランプリ」がこの地で開催され、アルファロメオを駆るジュゼッペ・ファリーナが初代勝者として名を刻んだのです。
イギリスのモータースポーツ産業は、このシルバーストーンを中心とする半径数十マイルのエリア(通称:モータースポーツ・バレー)にメルセデス、レッドブル、マクラーレン、アストンマーティンなどのF1チーム本拠地が集中する独自の産業クラスターを形成しています。社会学的な観点から見ても、貴族階級のアマチュアイズムと町工場の高度な職人技(バックヤード・ビルダー文化)が融合したイギリス独自のクルマ文化の象徴であり、単なる競技場を超えた文化遺産としての地位を確立しています。
かつては路面が荒れたフラットな飛行場コースと揶揄された時代もありましたが、幾度におよぶ大規模改修を経て、2011年には現在の近代的複合ピット施設「シルバーストーン・ウィング」が完成。伝統的な高速レイアウトのDNAを頑なに維持しながら、最新鋭の安全基準とエンターテインメント性を兼ね備えたモダンサーキットへと進化を遂げました。