『ルパン三世』の代名詞とも言えるタイプライター演出が初めて導入されたのは、1977年から放送が開始されたTV第2シリーズ(通称:赤ジャケット版)です。今でこそスタイリッシュな演出の代名詞として称賛されていますが、その誕生の契機は驚くべきことに「制作スケジュール逼迫に伴う作画枚数の節約」と「尺(放送時間)の調整」という、極めて現実的な制作現場の台所事情でした。
当時のアニメーション制作において、毎週20分強のクオリティを維持し続ける現場の負担は凄まじく、少しでも作画の手間を省きつつ、画面を持たせるアイデアが常に求められていました。そこで演出陣が着目したのが、海外のサスペンス映画やスパイアクション映画(『007』シリーズや『スパイ大作戦』など)で見られた「文字情報のみで緊張感を煽る」テレタイプ端末やタイプライターの演出手法でした。
一枚絵の背景に文字を1文字ずつ焼き込み、機械的な打鍵音を当てるだけで、作画枚数をほぼ消費することなく5秒から10秒ほどの時間をスタイリッシュに演出できる――この「苦肉の策」が生み出したミニマリズムが、結果として視聴者に強烈なインパクトを与える奇跡的な名演出へと昇華したのです。