なぜ多種多様な雑貨から業務用食材までを網羅するドン・キホーテであっても、ドライアイスの通常販売に踏み切らないのでしょうか。そこには、ドライアイスという物質特有の物理的性質と、店舗運営上のシビアな採算ラインが存在します。
ドライアイスは二酸化炭素に圧力をかけて固体化したものであり、その表面温度はマイナス78.5℃という極低温です。一般的な業務用冷凍庫(マイナス20℃〜マイナス30℃前後)に保管していたとしても、外気熱によって常に「昇華(気化)」を続けます。つまり、店頭に入荷した瞬間から刻一刻と体積が減り、時間が経てば商品価値がゼロになって消滅してしまう性質を持ちます。
小売店舗のオペレーション視点で分析すると、超低温を一定に保つ専用ストッカーの導入費用に加え、販売に至るまでの昇華ロス(廃棄損)が極めて高くなります。さらに、素手で触れれば瞬時に重度の凍傷を引き起こす危険物であるため、一般の来店客が自由に手に取る棚へ陳列することは安全管理上、極めて高い訴訟・事故リスクを伴います。これらの理由から、一般的な総合ディスカウントストアがドライアイスを「物販商品」として取り扱うことは事実上不可能なのです。