髙木菜那のキャリアを語る上で欠かせないのが、2022年北京冬季オリンピックの女子団体追い抜き(チームパシュート)決勝です。連覇まで残り半周の最終コーナーでまさかの転倒を喫し、銀メダルに終わったシーンは世界中に大きな衝撃を与えました。
直後の個人種目マススタートでも果敢なアタックを見せたものの転倒し、リンク上で涙を流した姿は記憶に新しいところです。一部では「北京五輪の悔しさから逃げるように引退を決めたのではないか」という穿った見方もされましたが、それは完全な誤解です。
2022年4月の引退会見において、彼女は晴れやかな表情で次のように語っています。
「北京五輪の前から、この大会を私の集大成にすると心に決めていました。転倒も含めてあれが私のスケート人生のすべてであり、1ミリの後悔もありません」
限界まで自分を追い込み、身体と精神のすべてを氷上に捧げ尽くしたからこそ辿り着いた、極めて前向きで自律的な引退決断だったのです。