内山昂輝さんは、アニメファンのみならず業界関係者からも「憂いを帯びた少年や、孤高の知性派を演じさせたら右に出る者はいない」と評される名優です。そのキャリアを俯瞰した際、キメラアント王・メルエム役は彼の演技の幅を決定づけた分岐点として位置づけられます。
それ以前の内山さんは、『キングダム ハーツ』シリーズのロクサス役や『機動戦士ガンダムUC』のバナージ・リンクス役など、過酷な運命に翻弄されながらも葛藤する繊細な少年役で高い評価を得ていました。しかし、メルエムという「絶対的な力を持つ支配者」でありながら「人間への目覚め」を経験するキャラクターを演じ切ったことで、冷徹な悪役や複雑な内面を持つダークヒーローの役柄へとオファーの幅が一気に拡大しました。
事実、その後の代表作である『ハイキュー!!』の月島蛍役(シニカルでクレバーなブロッカー)、『僕のヒーローアカデミア』の死柄木弔役(歪んだ憎悪を抱く敵連合の首領)、『呪術廻戦』の狗巻棘役(言葉に呪力が宿る呪言師)など、一筋縄ではいかない多面的なキャラクターにおいて、メルエムで培われた抑制された声の説得力が見事に活かされています。