クマ鈴やラジオの携行は基本ですが、それ以上に重要なのは「その場にヒグマが直前まで居た痕跡」を察知して即座に引き返す危機察知力です。山菜採りやトレッキング、さらには郊外の散歩時において、ヒグマ痕跡フン足跡の見分け方を把握しておくことが命綱となります。
1. 足跡(フィールドサイン)の識別
ヒグマの足跡は、人間の素足や掌に酷似しています。前足は幅12〜18cm以上あり、特徴的な5本の指と、その先端に長く鋭い爪痕がくっきりと残ります。エゾシカの蹄(ひづめ)やタヌキ・キツネの足跡とはサイズも形状も圧倒的に異なります。泥地や残雪の上に、湿り気を帯びた真新しい足跡があれば、数分前〜数十分前にそこを通過した証拠です。
2. フン(糞)の状態と鮮度
ヒグマのフンは大量(一度に1〜2kg)で、季節の摂取食物によって外観が劇的に変化します。 春先はフキや草本類を主食とするため「緑色〜黒っぽい繊維質の塊」、夏はヤマブドウやミズキの実を食べるため「種子や果皮が混ざったペースト状」、秋はドングリやサケを食べるため「茶褐色でドングリ殻の混ざった塊や生臭い魚骨片」となります。フンから湯気が立ち上っていたり、ハエがたかり始めたばかりで表面が乾いていない場合は、同一エリアの至近距離に潜んでいると判断し、直ちに退避しなければなりません。
3. 食痕・爪痕・掘り返し
トドマツやカラマツの幹に地上1.5〜2mの高さで残された縦方向の深い爪痕(マーキング)、アリの巣やセミの幼虫を捕食するために土が広範囲に掘り返された跡、エゾシカの死骸に土や落ち葉が不自然に被せられている「土饅頭(どまんじゅう)」を発見した場合は危険度が極大です。土饅頭はヒグマが獲物をキープしている状態であり、近くで侵入者を激しく監視・威嚇しています。