夢の中でも、特に心身をすり減らすのが「追われる」「落下する」「大切な人を失う」といった不快な夢です。悪夢ばかり見る心理には、抑圧されたストレスと疲労がダイレクトに投影されています。心理学や精神医学の分野では、悪夢は日中に処理しきれなかった強い不安や恐怖感情を、無意識が強制的に情報処理しようとする防衛反応の一種と考えられています。
しかし、心理的な負荷だけが原因とは限りません。中には、明確な身体疾患が引き金となっているケースがあり、決して自己判断で放置してはなりません。代表的なものが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
気道が塞がって一時的な窒息状態に陥ると、血中の酸素濃度が急激に低下し、脳は命の危機を察知して激しいパニック状態に陥ります。この低酸素ストレスと窒息感が、「水に溺れる夢」「狭い場所に閉じ込められる夢」といった悪夢へと変換される事例が、呼吸器内科や睡眠専門クリニックの臨床報告で数多く確認されています。さらに、夜中に何度も呼吸が止まることで脳が強制覚醒させられ、中途覚醒と熟睡障害が慢性化します。「最近、悪夢の内容がリアルになり、夜中に動悸や喉の渇きで目が覚める」という自覚症状がある場合、背後に重大な病態が潜んでいる可能性を強く疑う必要があります。